僕の……

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 私は瞳を(うる)ませる涙をそのままに、思わずクスクス笑ってしまった。  頼りない私にしっかり者の彼が必要なように、時折盲目になる彼にもまた、ブレーキをかける私が必要なのかもしれない。  ――そう思ったら、徐々に心が落ち着いてくる。 「ね、理人(りひと)。お願いしても……いい、かな?」  私は依然として立ったままの理人に、リングケースを手渡すと、左手をそっと差し出す。  今日は特別な日なんだもの。お姫様みたいに、王子様から指輪を()めてもらったっていいよね? 「もちろん。喜んで」  私の視線を受けて、理人がとても優しい目をして微笑んだ。  私の前に片膝をついた姿勢をして、薬指に指輪を通してくれる理人を見つめながら、私は夢見心地でそんなことを考える。  今もらったばかりのエンゲージリングが、以前もらったペアリングと重ねづけになってしまっているのが、彼にこの上なく愛されている象徴みたいで何だか照れ臭さを倍増させる。  今、指輪をつけたばかりの私の手を口元に引き寄せると、理人がそこにキスを落としてくれた。  もう、それだけで心臓が破裂しそうに高鳴ってしまう。  「葵咲(きさき)、耳まで真っ赤になってる。本当、僕の婚約者(フィアンセ)はなんて可愛いんだろう」  理人がそんな私を見上げるように見つめると、うっとりとそう(つぶや)いた。  彼のその言葉に、身体中の血液が一瞬にしてぶわり、と燃え上がるのを感じてしまう。  真っ直ぐに私を見つめてくる理人が、私にとってどれだけ愛しく感じられているかなんて、彼は知らないんだろうな。 「理人の、意地悪(いじわる)……」  私は、伏し目がちにそう告げながら、小さな声で「でも、そんな貴方が大好きです……」と付け加えた。
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