華やぐ心のままに

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 ただ、広くなった分、賃料は元のアパートよりかなり高くなってしまったはずで――。そこを心配した私に、理人(りひと)は問題ないよと言って微笑んだ。  その時に、私は理人から「キミはいずれ僕のお嫁さんになる人だから」と言われて……彼の給料明細や預貯金などを全て見せられたのだ。  それを受けて私のも教えようとしたら、やんわりと断られた。  将来のことはどうなるか分からないけれど、せめて葵咲(きさき)が学生のあいだぐらいは、キミのお金をあてにするような男にはなりたくないから、と言われて。  もちろん、結婚したらちゃんとそういうのもお互いに見せ合おうね、とは言ってくれたけれど、少なくとも私が社会に出ないうちは知るつもりはないみたい。  そういうところが、何だか理人らしいな……と思ってしまった。 「宜しく……お願いしますっ」 そうして私は今、理人が新しく用意してくれた新居で、彼と向き合って、照れながら挨拶なんて交わすことになっている。  さすがに三つ指はつかなかったけれど、それでも充分(おごそ)かな気持ちになっているのは事実で――。  私より一足先に新居へ引越しを終えていた理人も、部屋の敷居をまたぐなり玄関先で頭を下げてこんなことを始めた私に、ドギマギとした様子だった。  慌てて背筋を伸ばしてかしこまると、 「こ、こちらこそ宜しくお願いします!」  私の手荷物を受け取りながら、照れた様子でビシッと頭を下げる。私はそんな理人が本当に愛しくて。  これからここで、彼との新しい暮らしが始まるんだと思うと、私の心臓はこれ以上ないくらいに高鳴った。
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