■スタ特より『あなたには敵わない』■

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「き、金貨?」  しりとりってこんなに照れくさい遊びだったかしら?  そんなことを思いながら、思いついたままの言葉を口にしたら、「可愛い」って耳朶(じだ)をペロリと舐められて。 「んっ」  私は思わず変な声を漏らしてしまう。  熱を持った耳を慌てて片手で押さえてから、もう、いっそのこと色気のない言葉を言ってやるんだから!と考えて「石垣!」と言ってみた。  なのに――。 「綺麗……」  うっとりとした声音で理人にそうつぶやかれて、唇を割り開くように指の腹でなぞられた私は、もうしりとりなんてどうでもいい、と思ってしまっていた。 「い……イチャイチャ……したいな? ――ダメ?」  綺麗、の「い」を受けたわけではないけれど、私はトロンとした声音でそう言うと、自分から理人にキスをした。  停電、いつになったら直るかな。  雪に覆われた町はしんと静かで……私と理人の息遣いだけが、まるで世界の全てみたいに思えた。   END(2020/02/24)
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