書庫の中*

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 一通りことの経緯(いきさつ)を説明した僕に、葵咲(きさき)ちゃんはそれでもどこか納得していない様子だった。  その証拠に、僕の両腕と書架に閉じ込められて逃げることはかなわないくせに、微塵もひるんだ様子もなく真っ直ぐ僕を睨み付けてくる。 「……でも、だからって、そこまでする?」  信じられない、と小声でつぶやく彼女に、僕はわざとらしくため息をついてみせた。 「前に言ったよね? 一人の男として僕を見て欲しいって。そのためなら僕はどんな手段だって使うよ」  幼いころから読書家で、そのうえ努力家でもあった葵咲ちゃん。  図書館は、そんな彼女にとって必要不可欠な施設だと、僕は子供のころから知っていた。だからここを職場に選んだのだ。 「理人(りひと)を男として見ろって言われても……無理だよ。だって私たち、小さい頃からずっと一緒にいたんだよ?」  なぜかそこで僕から視線をそらすと、それでもはっきりと言葉を続ける。
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