書庫の中*

5/8
前へ
/617ページ
次へ
 余りにも身体が熱くて……口づけだけでこんなにも興奮してしまう自分が嫌になる。  葵咲(きさき)ちゃんの上気した頬と、濡れた唇。口の端を伝う唾液。  彼女の口元を指先でそっと拭って……僕は彼女を見つめた。  さっき僕が外したままのブラウスの胸元から、薄桃色のレースと白い肌が垣間見える。  ――あのブラジャーを外してじかに乳房に舌を這わせたい。  そんな衝動に駆られて、僕は一度大きく頭を振った。  まだ、彼女の返事を聞いていない。 「イヤだって言ったら……やめてくれるの?」  ややして、つぶやくように彼女がそう言った。  それは、逡巡(しゅんじゅん)する僕の気持ちを確かめるような言い方だった。 「無理矢理、したいわけじゃ……ないから」  ここまでさんざん勝手なことをしておきながら説得力はないかもしれないけれど。  それでもやはり最後の一線を越えるなら……彼女にも僕を求めてもらいたい。  グッと拳を握りしめると、僕は葵咲ちゃんの胸元に手を伸ばした。その仕草に、ビクッと強張る彼女を見て、心が決まる。
/617ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3557人が本棚に入れています
本棚に追加