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半ばもたれかかるようにしてどうにかこうにか家の鍵を開けると、ずるずると壁にすがるようにして中に入って施錠する。
いや、別に僕ひとり家にいて襲われることなんてないだろうけど、不意に誰か訪問者があって、扉を開けたときにセレが出て行っちゃったら困るからね。
しんどくてしゃがみ込む気になれず、足をすり合わせるようにして靴を脱いでいたら、家人の帰宅の気配を嗅ぎつけたセレがニャニャニャーンと言いながら走って来た。
そのままの勢いで僕の足にぶつかるように擦り寄ると、撫でて?と言わんばかりに大きな目をこちらに向けてくる。
真っ黒な毛に、金色の大きな目が映えている。
「ただい、ま。……いい子に、して、た?」
喉の痛みで掠れた声を掛けながら、セレの頭をそっと撫でる。
ヤバイ。
ちょっと下向いただけなのにこのまま倒れちゃいそう。
セレを潰してしまうわけにはいかないので「ごめ、ん」と謝って身体を起こすと、右肩を壁にこするようにしながらズルズルと前進する。
そんな僕の様子に、さすがにセレもオヤ?と思ったらしい。
いつもみたいにガンガン擦り寄ってこないところをみると、お気遣いのできるニャンコだ。
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