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リビングに入ってセレのトイレをチェックして、いつもより数時間早いけど、ご飯も準備する。
セレの器を棚から取り出したら、時間なんてお構いなしなんだろうな。「ご飯ですか!?」とキラキラした目で僕を見上げてきた。
烏羽玉色の艶やかな毛に、アーモンドみたいな大きな吊り目。
何となく葵咲ちゃんを彷彿とさせられて、何て可愛いんだろう!と思う。
セレは男の子だから葵咲ちゃんにはなり得ない――っていうかそもそも猫だから無理なんだけど、そんなことを思いながら、ニャーニャーとすり寄るセレにご飯を置いてやる。
ニャ、ニャッと小さく喜びの声を漏らしながら器に頭を突っ込むセレを横目に、
「ごめ、……僕ちょっと横にな、るね」
言って、寝室に向かった。
遮光カーテンを閉めて、でも少しだけ迷って窓は全開にしておいた。
もし僕が寝ている間に、誤って葵咲ちゃんがここに入ってきたりしたら……って考えると何としても密室は避けたくて。
服を着替えるのがしんどくて、スーツの上着とスラックスを脱ぐと、ネクタイを軽く緩めてシャツにボクサーパンツという何とも中途半端で恥ずかしい格好のまま、ベッドに倒れ込む。
お風呂も入ってないし、着替えてもいないのにごめんなさい。
元気になったらちゃんとシーツとか取り替えるから今は許して。
誰にともなく言い訳をして、僕はやっと身体の力を抜いて安堵の吐息を漏らした。
と、ゾクゾクと悪寒がして、頑張って布団に潜り込んでみたけれど、この身体の芯からくるような震えはどうしようもなくて。
これ、今から熱が上がるのは必至として……解熱鎮痛剤とか買い置き……どうだっけ……。
思ったけど、全てがどうでもいいと思ってしまう程度には、僕の身体は休息を欲していたらしい。
気がつけば、僕の意識はいつの間にか深い深い眠りの底に落ちていた。
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