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葵咲ちゃんが毎週楽しみにしているドラマがある。
僕はさして興味はないのだけれど、ドラマに一喜一憂する葵咲ちゃんを見たくて一緒に観ている感じ。
その中で、まさかまさかの展開。
ヒロインの恋人の男が死んじゃった!
当然葵咲ちゃんははらはらと涙を落としてさめざめと泣いて。
それを見ている僕もキュッと胸が苦しくなった。
――誰だよ、こんなクソみたいな脚本書いたやつ!
誰よりも大好きで、何よりも大事で、いつも笑顔で居て欲しい葵咲ちゃんを泣かせるなんて、例え絵空事でだって許せない。
僕は心の中でそのドラマの作り手達を口汚く罵った。
作品自体はしつこすぎるくらいに濃厚な恋愛ものだったけれど、そんなの無視してファンタジージャンルに放り込んで、死んだ恋人を生き返らせてやりたい!
葵咲ちゃんのために!
頭の中では馬鹿なことを考えている僕だったけれど、顔には微塵も出さずに葵咲ちゃんの顔を覗き込む。
「葵咲、大丈夫?」
そっと葵咲ちゃんを労るように、ひとり静かに泣き続ける彼女の背中に腕を回したら、葵咲ちゃんが無言でギュッとしがみついてきた。
こんな反応、基本ツンな葵咲ちゃんには珍しい。
ホント、なんて事してくれるんだよ、クソドラマめ!
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