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「バカだな、葵咲。僕がキミを置いて居なくなったりするはずないじゃないか」
僕が先に死んで、葵咲ちゃんが別の誰かと結ばれるだなんて――。
例えそれが僕と似た男だと言われたって、全然嬉しくなんかない。
だってそれは僕じゃないんだから。
「僕が死ぬときは、葵咲ちゃんと一緒だよ」
そっと彼女の耳元で優しくつぶやいて。
だけどその言葉が孕む狂気に、僕はちゃんと気付いている。
――僕ひとりでは死なないし、葵咲ちゃんひとりでは死なせない。
僕がそんなことを思っているだなんて知ったら、葵咲ちゃんは怖がるかな。
だけど僕は……キミが僕のいない世界で生きていくことを想像できないし、逆も然りなんだ。
「ねぇ葵咲。ずっとずっと一緒だよ?」
ギュッと葵咲ちゃんを腕の中に閉じ込めながら、僕は自分の中の狂おしいほどに彼女を求めてやまない気持ちが少しだけ怖くなる。
どうか僕が彼女の後を追って逝ける結末になりますように。
どんな形であれ、僕に葵咲ちゃんを殺させないで?
END(2021/04/27)
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