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「理人! 蕾がっ」
ベランダにコスモスの種を植え付けて以来、毎朝の日課になっている鉢の様子チェックをするなり、葵咲が嬉しそうにリビングに顔を覗かせる。
初めて芽が出たとき。
いくつか芽吹いたものを、発育が良いものひとつだけ残して間引いたとき。
残した1本に本葉が出てきたとき。
何か変化があるたび、葵咲は嬉しそうに理人に報告をしてくれた。
理人だって窓辺に立つたび、葵咲が大事に育てているコスモスの様子を見守ることが日課にはなっていたけれど、自分からは極力気にしている素振りを葵咲には見せなかった。
それは葵咲がコスモスの世話などに関して、理人には手出しをして欲しくないと言うオーラを醸し出していたからに他ならない。
そんなこんなで、何だか鉢植えに夢中の葵咲を見ていたら、ちょっぴり手塩にかけられたコスモスが憎らしくすら思えてしまって。
そんなコスモスのことを、何だかんだ言いながらも気遣っているだなんて、口が裂けても認めたくなかったのだ。
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