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理人はコーヒーメーカーのスイッチを入れながら、そんな葵咲の声にのんびりと顔を向ける。
リビングに数歩分入ったところで手招きしてきた葵咲に誘われるように、理人はベランダの方へ向かった。
開けっ放しの窓から吹き込んだ風がひらりとレースのカーテンを翻らせて、差し込んだ陽光に、葵咲の姿が後光を帯びる。
葵咲の艶やかな黒髪が、緑がかった虹色にきらりと輝いたのが見えて、
「綺麗だね……」
思わずそうつぶやいたら、葵咲がキョトンとした。
「ん? まだ花は咲いてないよ?」
例え花が咲いていたとしたって、理人にとっていつだって1番美しいのは葵咲に他ならないのに。
分かってないなぁ。
内心そんなふうに思った理人である。
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