一目惚れ

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 僕が通っていた小学校には、登校班というものがあった。  要は近隣に住む子供達をかき集めて、登校時や集団下校時、上級生に下級生の面倒を見てもらおうというシステムだ。  その年、僕の所属する班の6年生は自分だけだったから、僕は否応無く班長にされてしまった。  とはいえ、年々子供の数自体が減少傾向で、僕の地区はその中でも特に高齢化の進んでいるエリアだったから、実はここ数年自分より年下の在校生は一人もいなかった。  そんな状態で班長と言われても、肝心なメンバーがいなくて笑えるよね。  そう母親に訴えたら、「あら、今年から丸山(まるやま)さんのところの葵咲(きさき)ちゃんが一年生よ」と教えられた。  「丸山さんって誰?」と問うと、「あぁ、岩村のおばあちゃんのところよ。この四月から娘さんのご家族が同居されることになったの。そのご一家の名前が丸山さん」と。  どうやら岩村家のお嬢さんが嫁いだ先が丸山家で、その娘さん――涼子(りょうこ)さんと言うそうだ――とうちの母は幼なじみらしい。 「あんたが学校に行ってる間にお母さん、涼子ちゃんとお茶したの。そのとき葵咲ちゃんにも会えたんだけどね、すごく可愛らしいお嬢さんだったわよ。理人(りひと)、明日から葵咲ちゃんのこと、しっかり守ってあげるのよ? でなきゃ男がすたるんだからね」  勝手なことばかり言う母親は無視するとして、明日から始まる新学期の登校、見知らぬ小さな女の子と2人きりはさすがにキツイな、と思ったのを覚えている。
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