■キミとコスモスとボク

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「……うん、そう……だね」  葵咲(きさき)は理人に自分自身の愛を込めたくて、あの花の植え付けからずっと、彼に手を出されないよう気を張ってきた。  でも、理人はそれを〝一緒に〟したいと言う。  言われてみれば、そのほうが何だか数倍〝愛〟に満ち溢れた暖かな花が咲き誇りそうな気がして、葵咲は目から(うろこ)が落ちる思いだった。  それに――。 「葵咲、大好きだよ、愛してる」  やっぱり花を介した間接的な愛情表現より、お互いの温もりを肌で感じられるやり方の方が、胸にグッと迫ってくる。 「……ね、理人(りひと)、お願い――」  もう1回ギュッてして?  皆まで言わなくても、葵咲のことをよく知る理人は、葵咲がほんの少し気持ちを込めて見上げただけで、恋人を抱く腕にそっと力を込めて抱き締めてくれる。 「理人、私も貴方が大……き。愛……てる」    恥ずかしくて途切れ途切れになってしまった「大好き」と言う言葉も「愛してる」と言う言葉も……きっと理人は察してくれたと思う。  でも。  コスモスの花が綺麗に咲いたなら、今恥ずかしくて言えなかった言葉を、花の陰に隠れて声に出してちゃんと伝えられるかな。  葵咲は理人の腕の中で、そんなことを思う。  (つぼみ)が開花するころにはきっと、と――。     END(2021/05/12-5/13)
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