■今日はハグの日

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 手のひらに心地よい弾力を伝えてくる葵咲(きさき)ちゃんのやわ肌は、暑いと訴える彼女の言葉の通りしっとりと汗ばんでいた。  それがまた、手のひらに吸い付いてくるみたいでたまらない。 「大好きな女の子のやわらかな胸を、好きなときに好きなだけ触らせてもらえるのって……何て幸せなんだろう」  うっとりとつぶやけば、「私、そんなの許可してない……」と小さく抗議の声が落とされる。  だからと言って全力で拒否してこないのは、葵咲ちゃんも僕に触れられることを本気で嫌がってない証拠(サイン)だ。  葵咲ちゃんは言葉裏腹な女の子だから。 「ね、葵咲、このままベッド行こっか」  甘えるように誘ったら「な、んで?」って返ってくるのも、想定の範囲内。 「何で?って。さっき僕、ちゃんと言ったと思うんだけどな? 今日はハグの日だよって」  だから裸で抱きしめ合うのは。  もちろん、僕は何でもない日だって、何だかんだと理由をつけてキミに欠かさず触れるんだけどね。  けどさ。年に1回。今日ぐらいは「ハグの日」のせいにして、思う存分甘えても構わないよね? 「――葵咲、愛してる」  葵咲ちゃんの小さな身体を、柔らかな胸ごとギュッと抱きしめながら、僕は彼女の真っ赤になった耳元に愛の言葉をささやいた。      END(2021/08/09)
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