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「今日は暑かったからかなぁ。リュックのせいで背中、蒸れちゃったみたい」
――何だかちょっぴり痒いの。
恥ずかしそうにそう付け加えた葵咲に、理人が血相を変えて駆け寄る。
「見せて」
言うが早いか、葵咲の着ていたTシャツをガバリと捲り上げて。
期せずして玄関扉に押し付けられる格好になった葵咲が、真っ赤な顔をして抗議の声を上げたのも当然だ。
「や、やだっ、理人っ。ここ玄関っ」
押さえつけられたまま、たくし上げられたTシャツを下げようと引っ張ったけれど、理人の力に敵うはずがない。
少し汗ばんだ背中を玄関先で理人にまじまじと見つめられてしまった葵咲は、物凄く恥ずかしくなった。
壁に押し付けられた格好のまま、涙目で理人を振り返ったら、「赤くなってる」と肌に吐息の掛かる距離でつぶやかれた。
次いで生温かく柔らかな感触が背中に押し当てられたのを感じた葵咲は、思わず「んっ」とどこか艶めいた声を漏らしていた。
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