■こうして今日も、あなたの甘い罠にほだされる

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理人(りひと)、何して――」  未だ押し当てられたままのその温もりに、必死に背後を振り返れば、理人が葵咲(きさき)の背中に唇を寄せていた。 「僕のキスでキミの痒いの、全部吸い取れたらいいのに」  ポツンとつぶやかれた言葉に、葵咲はほぅっと溜め息をひとつ。 「私から吸い取った痒いので、理人の唇が腫れても知らないんだから」  ギュッとTシャツのすそを引いて背中を隠すと、背後に立ち尽くしたままの理人を振り返って唇を尖らせる。 「僕はそれでも構わ――」 「私が構うの! 理人が私を心配してくれるように、私も理人が心配なのよ? それにね――」  構わないと言おうとしたであろう理人を制するように言葉を被せると、葵咲は理人を振り仰いだ。 「もしそんなことになったら……」  ――キスしにくくなっちゃう。  言外にそんな言葉を乗せて、葵咲が理人を見つめる。 「葵咲……」  そんな葵咲をギュッと腕の中に抱きしめると、理人は彼女の耳元で低く甘く(ささや)いた。
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