きみを守りたい

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 頭は打ったけど、他は無事みたいだ。 「大丈夫」  葵咲ちゃんの泣きそうな顔を横目に、周りのものにつかまりながらゆっくりと立ち上がって、そう思う。 「……きみこそどこにも怪我、してない?」  全身全霊をかけて彼女の身は守ったつもりだけど……でも万が一ということもありえる。  ワンピースが血まみれなのも、僕を不安にさせた。 「私は、どこも怪我してない……。理人が(かば)ってくれたから」  元気元気!と笑う葵咲ちゃんを見て、ホッとする。  でも、ガッツポーズをして見せる彼女の二の腕に、小さな擦り傷を見つけて、胸の奥がチクリと痛んだ。 「腕……」  指差すと、 「違うよ、これはさっき携帯取りだしたときにね、擦りむいたの」  書架が倒れてきた時は無傷だったよ、と微笑みかけてくれる葵咲(きさき)ちゃんの優しさに、僕はひとまず甘えることにする。  倒れた本棚と、散乱した本を避けながら、彼女を後ろにしてゆっくりと階段を目指す。  歩いていたら、何度か目の前が霞んで、僕はそのたびに彼女に見えないように自分の足を強くつねって意識を保った。  少し、血が出すぎたかもしれない。でも、今、倒れるわけには……いかないんだ。
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