一目惚れ

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 実は母からの事前の情報で、一人っ子の彼女が、きょうだいに憧れているということはリサーチ済みだった。  母から、「理人(りひと)がお兄ちゃんになってあげたら喜ぶんじゃない?」と言われた時は何をバカなことを、と思っていたのだが。  今はあの時の母さんに、グッジョブ!と心からの称賛を贈りたい。  突然の僕からの申し出に、葵咲(きさき)ちゃんの目がみるみるうちにキラキラと輝く。 「お兄ちゃんって呼んでもいいんですか?」  上目遣いで問いかけられて、誰がダメと言えようか。  あの日、僕は心の中でガッツポーズをしながらも、顔は平常心を装って、 「もちろんだよ」  優しく微笑んで彼女の警戒心を解きほぐした。  こうして、僕に可愛い妹が出来た。  光源氏計画――幼な子を手懐けて、自分に惚れるように育て上げる――が始動した瞬間だった。
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