散歩

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散歩

飼い主が仕事に行っている間、きなこは自宅を抜け出しては、街をふらふらと散歩する。 てくてく……ちょこちょこ……て、て、て、て……と、忙しなく4本足を動かして歩いて街を行き交う人達の間を擦り抜けながら、更に歩くと……。 後ろから歩いて来るサラリーマンの靴の爪先に当てられ、ボールの様に、ころころ……ころころ……ころころ……。 〝うわぁ~ん!目が回る~!〟 そのまま、ぽ~んっ!と弾け飛び、怖さのあまり、体を丸くして衝撃に備える。 体を丸くしたきなこに、通りすがりの人物の顔めがけて落ちて来る……。 〝落ちる~……!〟 ぎゅっ!と目を閉じたまま両手足を広げて、相手の顔にくっつく。 「んおっ!」 くぐもった声がして、ほんのりと暖かくなった顔に張り付くきなこを引き剥がす。 「な、ななな、何だっ!? ん?ハリネズミ……?」 きなこを摘まんだ人物は、きなこを睨む。 〝うっ!ううう……怖い……睨まれてる……。〟 睨まれ、円らな黒い目を潤ませ、ぽろぽろと、大粒の涙を流す。 「お前誰だ? 何で飛んで来たんだ?」 「きゅ、きゅ~……」 〝ご、ごめんなさい……。〟 「怒ってる訳じゃねぇんだ、泣くなよハリネズミ」 その人物は、泣いてるきなこの頭を撫でる。 「オレ……怖い、か?」 撫でながら、きなこの顔を見て、悲しそうな表情をすると、泣き止んだきなこは、その人物の頬に小さな両前足をちょんっ、と置いて、心配そうな表情する。 「心配、してくれてるのか?」 きなこは、その人物の頬にちゅっ、とキスする。 〝怖くないよ。 元気になった?〟 「ハリネズミ、ありがとうな」 礼を言って、その人物は人の少ない方へきなこを下ろすと。 「じゃあな、ハリネズミ」 それだけ言い残して、その人物は去って行く。
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