出会い

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 高校の通信科に通う青葉ちゃんは順調に単位を取得し、後半年で卒業というところだ。  これから図書館司書になるために進学し資格を取るか、働きながら司書補の資格からとっていくか考えている。 「あー、どうしたらいいのかなあ。」 今通っている高校は北山大学の附属高校で、ここの大学に進学すれば図書館司書になるための資格がもらえるのだ。 だけど、今の体調で大学に合格しても卒業できるのか?それが心配だった。 「最近ずいぶん調子がいいし、もしかしたら通学できるんじゃないかな?大学は朝から晩まで毎日講義にでなくてもいいし、のんびり勉強できるかもしれないわよ。」 貴美子は青葉ちゃんに建設的な意見を言った。  半年後、青葉ちゃんは体調に気を付けながら勉強を頑張り、念願の北山大学に入学できることになった。 「お母さん!合格したわ!」 「わー!やったね! 青葉、良かった…。」 喜美子は思わず涙ぐみ、青葉ちゃんを抱き締めて、 「よく頑張ったね。これからも、体に気を付けていこうね?  ゆっくりで良いから…。」 喜美子の心配をよそに、大学では今までの窮屈な青春を忘れたかのように、やりたいことに挑戦した。 中学時代の友人や通信科の友人も数人が同じ大学に入っており、なかなか会えなかった友人達とも再会した。そして、今度はたくさんの友達にかこまれて賑やかに過ごすことになったのだ。 サークルに合コンにおしゃれに、友達との旅行や勉強…。 青葉ちゃんの体調にはまだ不安はあったが人並みに青春を謳歌することになった。 「勉強の方はどうかな?」 喜美子は心配になって、時々青葉ちゃんの様子を聞いていた。 「うん、ちょーっと卒論がなかなかうまくできなくて…。」 ハァー…、とため息をつきながら頭を抱えている青葉ちゃん。 それでも青葉ちゃんは、なんとかギリギリで大学を卒業することはできた。 「青葉、おめでとう。」 「おめでとう。」 「ありがとう。お母さんやお祖母ちゃんやお祖父ちゃんのお陰だよ。みんなが応援してくれたから、頑張れたんだよ。」 「いやいや、青葉が頑張ったからだよ。」 祖父が、そう言って嬉しそうに青葉を見た。 今日のお祝いは、近所の美味しいと評判のお寿司やさんから、特上の盛り合わせ寿司の出前をとった。 お祖母ちゃんの作った、美味しい唐揚げもある。 家族みんなで青葉ちゃんをお祝いして、青葉ちゃんは今までで一番の幸せを味わっていた。 しかし、残念ながら青葉ちゃんが家から通える範囲で図書館司書の仕事は募集がなかったので、青葉書店の青葉ちゃんになることにしたのだ。 夏休みのボランティアの時みたいに青葉ちゃんの体調が良いときだけなのだが、今度はしっかりお給料もいただいている。 図書館司書として図書館で働く夢はまだ捨ててはいないが、大好きな本にかこまれて、おまけに大好きな琢磨と過ごせて、青葉ちゃんはとても幸せだ。 青葉書店は、琢磨や青葉ちゃんのアイディアでどんどんお客さんも増えて、小さな町の本屋さんながら大型書店並みの役割を果たしている。 これからが楽しみだ。 終わり  
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