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貴美子は、実家に帰ってからあまり外に出ようとしなかった。
出掛けると言えば、近所の本屋と赤ちゃん用品のお店くらいだった。
「ごめんねおかあさん。色々手伝いたいけど、青葉のことだけで精一杯で…。 子供がいても働いている人は一杯いるのに。」
離婚して実家に戻ったことに、とても負い目を感じている貴美子だった。
「おかあさん。そろそろ私働こうかな? 青葉は保育園に預けて…、」
「青葉は私が面倒見るわよ。働きたいなら、働けば良いわよ。それに、家の中にばっかりいたら体がなまっちゃうわよ。」
貴美子は仕事を探しはじめました。
いつものように貴美子と青葉ちゃんは馴染みの青葉書店にやって来ました。
そしていつものように絵本とガーデニングの本を買おうとレジのカウンターへ来ると、
「こんにちは、おじさん。私今仕事を探してるの。ちょっと働こうと思って…。」
「良い仕事はありそうかな?」
と、おじさんは問いかけた。
「私にできることってなんだろう?」
貴美子はため息をついた。
「良いところがなかったら、うちで働かないかい?」
そう言って、おじさんはレジの横にある゛店員募集中!゛の張り紙を指差した。
「君だったら、できると思うよ。私もまだ引退と言うわけではないし、青葉ちゃんが病気になったり用事があったら休んでも良いから。どうかな?」
「そーですねー。ちょっと考えさせてもらっても良いでしょうか?」
「ああ、大丈夫だよ。それじゃあよろしくご検討ください。」
そう言って、おじさんはさっとレジを済ませ二人を見送った。
貴美子は数日の間青葉書店へ就職するかどうか考えていた。
「おかあさん。青葉書店に行ったときに、レジのおじさんからうちで働かないかって誘われたんだけど、良いかな?」
「ああ、あの本屋さんならよく知ってるわ。あそこの社長はお父さんの高校の先輩なのよ。いつもお店に出てるでしょ?」
「あっ、あのおじさん店員さんじゃないの?私いつも馴れ馴れしく話してたんだけど…。」
「あなたらしいわね。まあ良いじゃない、そこがあなたの良いところよ。本屋さんで働くにはちょうど良いんじゃない?」
貴美子は少し迷っていたが、母と話しているうちに青葉書店で働くことに決めていた。
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