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 青葉ちゃんは、北山大の附属高校の通信科に入学した。 この通信科は、一年が前期と後期の2学期制になっていた。 学期末ごとに試験があり、合格すると単位がとれるようになっている。 通学は一週間のうち月曜から金曜まで、朝9時から夕方5時までの間に通信科の教室に来て、それぞれ必要な時間数、ネット授業を受けてレポートを作成することになっている。 わからないことは、通信科担当の先生のところへ行くと教えてもらえるそうだ。 もし体調に不安のある場合は、医師の診断書を学校へ提出すれば、すべて自宅でWeb授業を受けレポートはメールで送信する。 青葉ちゃんにとって、とても理想的な環境だ。 そして、この高校にはカウンセラーが常駐しており、なにも問題がなくても生徒は週に一度カウンセラーと顔を会わせることになっていた。 青葉ちゃんはカウンセラーの先生が何でも聞いてくれるので、今まで不安だったことや将来のことについて思いっきり話した。 「山ノ上さん、何でも私に話してくださいね。私はお話を聞くことしかできませんが、わかる範囲でサポートさせていただきますね。」 カウンセラーはのんびりした明るい30代の女性で、いつも笑顔で青葉ちゃんを迎えた。 青葉ちゃんがなにも話すことがないときでも、カウンセラーが話をしているうちにいつの間にか青葉ちゃんの方が話している。 中学時代の友人となかなか会えず寂しい思いをしていた青葉ちゃんだが、カウンセラーさんと仲良くなったり通信科の生徒とも知り合い、自分の世界を作りはじめた。  学校の合間に、青葉ちゃんは市内にある市立図書館を訪ねてみた。 「わー、静か…。なんだか落ち着く…。」 座って本が閲覧できるコーナーをとても気に入り、青葉ちゃんはのんびりと本を読みながら自分の世界にひたった。  ふと青葉ちゃんが本から顔をあげると、目の前にある透明なガラスでできた大きな壁の向こうには田んぼが広がり、その真ん中には小川が流れ、一番向こうには小高い山々が連なって見える。 その景色に見とれているうちに時間は流れ、あっという間に家に戻る時間になった。 「あっもうこんな時間、帰らなくちゃ。」 あわててさっきまで読んでいた本を貸し出し手続きしてもらった。 そして、図書館を急いで出ようとした青葉ちゃんとちょうど入って来る男性がぶつかってしまった。 「ごめんなさい。」 「あっ、悪い!大丈夫?」 二人とも同時に謝った。 「だ、大丈夫です。こちらこそごめんなさい。ちょっと急いでて…。」 「大丈夫ですよ。気にしないでください。お急ぎなんですよね?」 「はい、それじゃあ。どうも失礼しました。」 そう言って青葉ちゃんは家路を急いだ。
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