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出会い
青葉ちゃんが自宅に戻ると珍しく今日は、おじいちゃんが仕事から帰っていた。
おじいちゃんは定年退職した会社へ、家にいると体がなまるといって嘱託でまた勤め始めた。
普段なら夕食時にいることはまずないが、珍しく今日は暇だったようだ。
貴美子も帰宅しており、すぐに夕食を食べようということになった。
「あ、そうそう、今日ね青葉書店に珍しい人がいたのよ。誰だと思う?」
貴美子は唐揚げを大皿から取りながら、思い出してみんなに言った。
「社長の息子さんが急に昨日東京から帰ってきて、お店を手伝うからって言ったんだって。」
と貴美子が言うと、おばあちゃんが、
「えー?確か東京の大きな本屋さんに就職したって聞いてたけど。ねえお父さん。」
「そうだよ。全国チェーンだから、いつかこの町に戻ってこられるようにいってたけど、青葉書店で働きたいなんてどうしたんだろうな?」
おじいちゃんは先輩の息子さんを心配してそう言った。
夏休みに時々、青葉ちゃんは青葉書店を手伝っていた。無理をしない程度に体を動かした方が調子が良いので、ボランティアで手伝っている。実はおやつが目当てということもある。
「今年も私お手伝いに行ってもいいんだよね?」
と青葉ちゃんが貴美子に聞いた。
「そうねー。息子さんが手伝うっていってたけど、ボランティアなら大丈夫でしょ?」
夏休みのある日。
貴美子が書店に出勤する時に、青葉ちゃんも一緒にボランティア出勤した。
「こんにちはー。今年もお手伝いに来ました。」
社長と息子さんがこちらを振り返った。
「あっ!」
青葉ちゃんは見覚えのある顔に少し驚いた。図書館でぶつかった人だ。
「こんにちは!この間はぶつかっちゃってどうもごめんなさい。」
青葉ちゃんがそう言うと息子さんは、
「何度も謝らなくて良いですよ。全然大丈夫だから。」
といって笑っていた。
「おや、顔見知りだったのかい?」
社長はたずねた。
「そうなんだ。図書館でちょっとね。でも、名前は知らないよ。僕は、川上琢磨です。よろしくお願いします。」
「私は、山ノ上青葉です。こちらこそよろしくお願いします。」
「私の娘です。仕事の邪魔にならないよう言っておきますから。」
と貴美子が言うと、
「青葉ちゃんなら大丈夫だよ。邪魔なんてとてもとても、一人前の店員さん位頼りにしてるからね。」
社長は青葉ちゃんにエールを送った。
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