青錆の海-2

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青錆の海-2

20XX年某月。 隣のN国がロケット発射実験を始めた。 宇宙開発を目指し、純粋な科学技術向上が目的らしい。 我が国政府はそれを「飛翔体」と呼んだ。 性能的には宇宙まで届く「ロケット」とは言い難いく、 どちらかと言えば軍事目的の「ミサイル」に近い。 しかし「ミサイル」と断言するとN国が不快感を示す。 よって苦肉の策、玉虫色の表現にした。 警戒しながらその成否を見守っていた。 実験は成功し、宇宙に向けて飛びたった。 気を良くしたN国は何度も実験を始めた。 政府も成功に安心し、関心は徐々に薄れていった。 始めのうちは警報を流していたが、それも無くなった。 実験成功への賛辞を送っていた。 そんな中、飛翔体の一つがエンジンに不具合を生じ墜落した。 不幸なことにその落下地点は我が国の領海だった・・・ 青い豊穣な海だった。 幸い犠牲者はでなかった。 政府は再度警報を流す決定をした。 そのうち失敗する回数が増えてきた。 飛翔体の先頭には、鉄くずやゴミが入っていた。 人工衛星は付いていない。 もちろん弾薬も付いていない。 一体何を打ち上げたいのか分からない。 落ちる場所が領海からとうとう領土になってきた。 不思議と我が国を飛び越したりはしない。 落ちる場所は予測不能。 まさに運次第としか言えない。 目撃者は鈍器が空から高速で襲ってくるようだと語っていた。 ついに死傷者が出た。 当然政府は抗議をした。 あくまでも実験中の不幸な出来事の一つだと説明するN国に対して、 政府は抗議以外の選択肢を持たなかったからだ。 遺憾に思う とのコメントを繰り返した。 しかし、それはほんの始まりの一部に過ぎなかった。 錆びた鉄くずの残骸が青い海を覆い始めた・・・・
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