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青錆の海-3
我が国の抗議虚しくN国の実験は続いた。
あくまでも宇宙を目指し、平和利用のためと。
しかしその大半が宇宙まで届かず途中で力尽き、我が国領土に墜落する。
幸い今のところ都市部人口密集地、原発など重要施設近辺には落ちていない。
(自分に)当たらなければどうということはない。
という諺の通り、落下地点が選挙区ではない政治家はあまり問題にはしない。
ひたすら遺憾、遺憾と繰り返すだけ。
N国は、あくまでも科学実験、失敗は誰にでもある、
好き好んで大金を投資したそれを墜落させている訳ではない、
ただ人類繁栄のため止める訳にはいかない。
しかし怪我人、死者には心より哀悼の意を表するとコメント。
さらに落ちた部品を回収するための入国許可も申請してきた。
政府は検討中と言って保留している。
だけど失敗の数は増す一方。
例え飛び立たなくても、エンジン着火しただけでも、
避難警報が流れるようになった。
実際に死者が出ているので聞き流すわけにはいかない。
けれど一体どこに避難すればいいのかは誰も分からない。
警報を確実に聞くため国民一人一人に携帯端末が支給され、
同時に各所で大きな音で、まるで昔の空襲警報のように響いた。
明日は我が身と国民の不安は増すばかり。
同時に何もしない政府に怒りを感じ始めた。
本当ならばそれはN国に向けるべきなのだが?
政府で出来ることは限られている。
迎撃などできる訳がない。
なぜならこの国には正式に軍隊と言える組織がないのだ。
それに近い組織はあり、いろいろな物を所持はしているが、
迎撃ミサイル一つにしてもその発射代金は馬鹿にならない。
そもそも命中させても破片で被害が出てしまう。
しかも実際に発射したことはない。
あくまでも全てシナリオを書いた演習しか行っていない。
従ってイージスシステム、監視衛星、目視をフル稼働して飛び立つ
それを見守ることだけだった。
そしてついに墜落した場所の被害が徐々に無視できない規模になってきた。
農林水産業者が仕事に集中しづらくなってきた。
漁港、山林、畑作地が主な落下地点だったからだ。
国民の不信が政局に影響出始めてきた。
政府はある決断をした。
これは唯一無二の切札伝家の宝刀だった。
即ち。
経済制裁をちらつかせながら、地球最大の軍隊を誇る最強国「A国」
に発射中止の依頼をしてもらう決定をした。
切札発動の時がきた。
虎の威を借る狐、よらば大樹の陰・・・・などでは決してない。
青い海の色が変わる前に
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