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7
ぴちゃぴちゃと湿った音が、アザミの耳を犯している。
そこの引き出しにローションがあると言ったのに、取りに行く数秒ですら体を離すのが嫌だとばかりに、巨躯の男が身を屈めてアザミの後孔を舐めているのだった。
仕事の前後は、当然のことながらそこはきちんときれいにしている。
……している、が。
こんなふうに舌を潜らせ、中を舐められるのは……たまらなく恥ずかしかった。
「ああっ、んあっ、も、もういいっ」
腰を捻って逃れようとするのに、がっしりと逞しい腕に足を抱えられているためそれは叶わない。
後孔の浅い部分をぬめぬめと舌が這い、唾液で潤されたそこに、脇から指が入ってくる。
指と舌で、アザミの体が暴かれてゆく。
コリ……と、男の指が感じるスポットに当てられた。
指の腹でぐりぐりと押される。
「ひぁっ、あっ、あっ、あっ」
アザミの腰が跳ねた。
無毛の陰部では、勃起したペニスがアザミの動きに合わせて揺れている。
そこから垂れた先走りの淫液が後孔まで伝って、男の唾液と混じって指の抽送をスムーズにした。
ぬちゅぬちゅと節の高い指が抜き差しされる。
「も、もう抜けっ、あっ、あっ、イ、イっちゃうから、抜いてっ」
アザミは下腹部に顔を埋めている男の、短い髪を握った。
しかし男は離れない。
アザミのそこをびしょびしょに濡らしながら、三本の指で孔を広げ続けている。
男の指は長いし、太かった。
三本もまとめると、その辺の男の陰茎よりも大きいかもしれない。
それをじゅぼじゅぼと動かされて、アザミは悶えた。
すさまじい快感が、後孔から電流のように全身に伝わって、痙攣が止まらない。
「ああっ、で、出るっ、あっ、は、離せっ! あっ、あっ、ああああっ」
ぐりゅっ、と中で指を回された瞬間。
アザミの鈴口から、ぴゅっ、と精液が飛んだ。
アザミの腹を汚した白濁を、ようやく後ろから舌を抜いた男が、べろべろと舐めとった。
しかし指は入ったままだ。
アザミの腹を舐めながらも、男が筋肉を浮かせた腕を動かして、孔を犯し続ける。
「ひぁっ、ああっ、も、もう、イった、イってるから、止まれっ」
うねる肉筒を掻き分け、ぬちゅっぬちゅっと指をピストンさせる男の手から逃れようと、アザミは仰臥の姿勢から体を横へと捻った。
ソファの端を持ち、うつ伏せになって逃げようとする。
そのアザミの腰を、男が掴んだ。
ずるり、と背後へ引きずり戻され、尻を高く突き出す格好になる。
唾液でぬらぬらと濡れた孔が、物欲しげにパクパクと蠢いていた。
髪を乱したアザミが、顔を背後へ振り向け……引き締まった腹筋を辿るように、視線を上へ流してゆくと、獰猛な男の目とぶつかった。
余裕がないのはアザミの方だと思っていたのに、男の方がよほど切羽詰まった表情をしていて……天を突く怒張も、張りつめんばかりであった。
アザミは熱っぽい吐息を漏らし、喘ぎすぎて乾いた唇を舐めた。
そして、弓なりに背を反らし、尻を上げた格好のまま、両手で自身の尻たぶを掴み、そのまま左右へと開いた。
肉の広がりに合わせて、孔も広がる。
男の喉が、ごくりと鳴った。
「……挿れて」
掠れた声で、アザミが男を乞う。
逞しい男根が、ふるりと震えた。
「おまえを……僕に、ちょうだい」
アザミが言葉を重ねると、男の手が、尻たぶを広げているアザミの手に被さってきた。
男のてのひらは、熱かった。
ぬるり、と尻の狭間に陰茎がこすりつけられる。
ああ、とアザミの唇から声が漏れた。
かちかちに勃起したその先端が、アザミの孔に据えられる。
襞を、掻き分けて。
男根が侵入してきた。
抱かれることに慣れたアザミですら、苦しいほどの大きさだった。
張り出したエラの部分が、前立腺を擦りたてながら隘路を割り開いてゆく。
アザミは声もなく、背を波打たせた。
激しい快感が、アザミの中で渦巻いている。
はっ、はっ、と荒い息がお互いの喉から吐き出された。
こつ……と、先端がアザミの奥に行き当たる。
巨竿がぜんぶ収まったのだ、とアザミは安堵を覚えたが、男がアザミの腰を掴み、ぐいと男の方へ引き寄せてきたので狼狽した。
「う、うそっ」
ぬくっ、と奥の奥が開かれた。
そこは……S字結腸だ。
「ああっ、あっ、だ、だめっ」
アザミは首を振ったのに、男は腰を止めなかった。
呻きながら、アザミの肉筒のさらに奥を犯した。
アザミの膝からちからが抜ける。
立てていられず、ずるずるとソファへうつ伏せになったアザミの動きに合わせて、男も下半身を密着させたまま、アザミの上に被さってくる。
腕を突っ張って、アザミに体重のすべてを乗せない配慮はするくせに、大きなペニスは根元まで容赦なくすべてを埋め込んで。
男がようやく、はぁ……と深い呼気を漏らした。
ひく、ひく、と痙攣するアザミの髪を、背後から男がそっと掻き分けて。
あらわになったうなじの、こつりと浮き出た骨の上に、唇が当てられた。
「……大丈夫ですか?」
興奮に上ずった声で、男が問うてきた。
その振動が繋がった部分から響いて、アザミの皮膚が粟立った。
それでもアザミは、翻弄されていると男に悟られるのが嫌で、無理やりに勝気な笑みを浮かべ、ちらと男の顔を振り仰ぐ。
「んっ……だ、誰に、ものを言ってる、ん、だい」
笑ったつもりだったのに、出てきたのは自分でも驚くほど、快感に蕩けた声で……。
媚肉が勝手にうねって、筋の浮いた肉棒を締め付けた。
「くっ……、き、きつい、です。少し緩めてください」
「ふふっ……おまえが……大きいんだよ。……あっ? ば、バカっ、もう、大きくするなっ」
苦しげに呻いた男を笑ったら、体内で男がさらに膨らんだのでアザミは焦った。
もういっぱいだ。
アザミの中は、男でいっぱいだ。
それなのに、男が嵩を増してゆるゆると動き出したから……。
「ああっ、あっ、あっ、あんっ」
深い部分まで男を受け入れて、アザミは喘ぐことしかできなくなってしまう。
前立腺と、結腸部分が同時に刺激され、おかしくなりそうだ。
ビクビクと跳ねる腰が止まらない。
ソファに押し付けるようにされているアザミのペニスからは、白濁がとろとろと漏れっ放しになっていた。
「ああーっ、だ、だめっ、だめっ」
「アザミさんっ、アザミさん、愛してます」
ぎっ、ぎっ、と壊れそうなほどソファを撓ませてアザミを攻め立てる男が、低い声でそう囁いた。
彼の愛の言葉が、アザミの耳で溶ける。
聞き慣れた言葉の、はずだった。
店の客にも、なんども言われてきた言葉だ。
アザミだって、上っ面だけのその言葉を、口にしたこともある。
それなのに。
なにが違うのだろう。
男の声に、アザミのこころはどうしようもなく震わされた。
愛してます、という。
その、儚いような、愛の言葉に。
「んあっ、あっ、あっ、あっ」
ぬちゅっ、ぬちゅっ、とぬめる音を立てて、男の欲望がアザミの中を行き来する。
腹の奥が、破れてしまいそうだ。
怖いのに、気持ちいい。
これまでにアザミを抱いた、他の誰よりも、男のペニスはアザミの内側を満たしていた。
「アザミさんっ、アザミさんっ」
男がアザミの名を繰り返す。
アザミはその段になって初めて、そう言えばこの男の名前すら知らないことに気付いた。
護衛とキャストが必要以上に仲良くならないよう、護衛は名乗ることを禁じられているからだ。
アザミだって呼びたい。
この男の名を、呼んでみたい。
それなのに、口から出てくるのは嬌声ばかりで。
「ああっ、あっ、あんっ、あっ、あっ、あああっ」
アザミを犯す男の動きが早まり、解放が近いことを教えてきた。
結合部が淫猥な水音を立てている。
「あっ、あっ、だ、出してっ、な、中に、出してっ」
アザミはソファの生地に爪を立てながら、男の精を乞うた。
男の喉から呻き声が漏れる。
肉棒が、膨らんで……。
ばちゅっ、と、一際奥に、それが叩き付けられた。
「~っっっっ」
アザミは絶頂へと押し上げられた。
射精を伴わない、ドライオーガズムだ。
目が眩むような、すさまじい絶頂だった。
アザミの後孔が、ぎゅううっと男を締め上げる。
それにつられるように、男が吐精した。
どぴゅっとまき散らされた精液が、アザミの中をしとどに濡らした。
はぁはぁと呼気を弾ませて。
二人は声もなく体を重ねた。
背後から男にきつく抱きしめられたアザミは。
かつてないほどの充足感に、ゆったりと瞼を閉ざしたのだった……。
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