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ついに泣きつかれた僕はちょっと冷静になって辺りを見渡した。すると虫たちの音がより鮮明に内耳に伝わってきた。
その瞬間早くここから抜け出したい思いが強くなって、僕は一心に堤防を橋の方へと駆けだした。交差点から橋までは上り坂となっていたが、そんなのお構いなしに無我夢中で土手を駆けていった。―あの橋を渡って川の向こうに行けば、なんとかなるはず。―その思いでせいいっぱい手と足を振った。
橋に着く頃には湿った生暖かい空気に背中をびっしょりさせていた。ひゅーひゅーと息を切らした僕は橋裾の欄干に手をつき、アーチする橋の向こうを見た。
この橋は四車線に歩道までついた幅のある橋で、下を流れる川の幅もあることから長さもあり、向こう側が果てしなく先のように感じた。そのとてつもない大きな建築物が、交互に設置され首を垂らした電燈だけで、照らされている様子が、深海に棲む怪獣のように見えた。だから僕はまたそこで止まってしまった。
今度のは圧倒的なものに対する畏わさだった。僕の小さな体ではこの怪獣に勝てそうになかった。通ったら直ぐにたべられてしまいそうだった。
僕はそうやって躊躇した。けれど後ろからもっとやばい怪物が来そうで、僕はあわててまた一心不乱に今度は怪獣の上を走った。
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