いらいら

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いらいら

 灰色だった空から、ぽつりぽつりと雨粒が落ちてきた。ざああっという雨音を奏で始めるまで、そう時間はかからず。  私は慌てて近くのカフェに飛び込んだ。今日、降るって予報だったっけ? いや、そもそも天気予報なんてあんまり見ない。貴重な休日、いつもは家でだらだらして過ごすのに、たまには出掛けようって思ったのが、そもそも間違いだったんだ。  ああ、ほんとツイてない。  昨日の夜は、本当は友達と夕食を食べる約束だった。それが、 「急に彼から連絡が来て」? 「彼、来月まで出張だったんだけど、すぐ近くまで来てるからって」?  はあ?  リア充、爆発しやがれ。  こんなくだらない嫉妬心を抱いた罰だろうか……久しぶりに開いたスマホゲームで1万円課金した挙げ句、雑魚キャラばかりを引き当て、1ヵ月ほど放置していたブログは読者数が半分ちかく減っていた──いや、もともとそんなに読まれてはいないんだけど、それでもちょっとへこむ。  気分が塞いだから散歩に出た。当てもなくぶらぶら歩いて、気になる店なんかを覗いてみよう。そう思ったのにこの雨だ。本当にツイてない。  慌てて飛び込んだそのカフェは、個人経営の、小さな小さなカフェだった。いい感じに朽ちかけた木製のドア、木とコーヒーの匂いが混じった狭い店内。木製のカウンターの向こうで、初老の男性がグラスを磨いている。
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