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ひとりぼっち
ぽつ、ぽつ、と雨が降ってくると、まわりにいた子はみんな家に帰っていった。
誰もいなくなったすべり台。
揺れたままのぶらんこ。
最後まで砂場で遊んでた子は、おかあさんみたいな人が慌てて迎えにきた。
ぽつ、ぽつ、
ぽつぽつぽつぽつ。
雨の音がひとつになった。ざーって、出しっぱなしの水道みたいだ。
仕方なく、僕は木の下に移動した。
どうせ家に帰っても、誰もいない。
こんな暗い日に、暗い部屋に帰るなんて嫌だ。
背中にしょったランドセルをクッションみたいにして、ぼよん、ぼよんと体を木にバウンドさせてみる。あんまりおもしろくない。
誰もいなくなった公園は、いつもとは別の場所みたいだ。しずかで、さびしい。
さびしい?
ううん、僕はさびしくなんかない。ひとりなのは慣れっこだ。
だって僕は、家のカギをかけて出かけることもできるし、誰も迎えにこなくても、ひとりで帰れる。ひとりで留守番もできるし、電話に出ることだってできる。そのへんの1年生よりよっぽどオトナだ。
ツキン──と、胸の奥が小さく痛んだ。
これにも慣れっこだ。病気じゃない。一瞬だし、すぐ治る。
まだ、お昼だ。短縮授業って、嬉しいけど嬉しくない。夜までがすごく長い。
おかあさん、今日は何時に帰ってくるって言ってたっけ……。おかあさんが帰ってくるまでに、朝ごはんの食器を洗っておかなくちゃ。
ツキン──
またちょっと、胸が痛んだ。
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