否定

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否定

 苦しかった。  誰にも認められず、みんなが当たり前にできる事が当たり前にできなくて、笑われ、バカにされ、泣けばいじめられるし、自分を捨ててバカな役になりきるしかなかった。  高校へ行けば変わると思った。なんでそんなふうに思い込んでしまったのか。  違う土地の、それまでの自分を誰も知らない学校に入っても、結局は同じだった。当然だ、僕は僕でしかないのだから。  何かひとつでも取り柄があれば良かったんだろうか。勉強ができるとか、スポーツが得意だとか。  得意なものなんてない。  好きなものも何もない。  ──いや、ない事もなかった。小さい頃から絵を描くのが好きで、好きなものを、好きなように描いていた。  けれどある日、母に言われた──いつまでそんなくだらない絵ばっかり描いてるの。少しは勉強しなさい。イラストレーターなんてね、本当に才能のある、ひと握りの人しかなれないのよ。いい加減、夢ばっかり見るのはやめなさい。  才能がなきゃ、絵を描いてはいけないんだろうか。  絵を描くのは、僕にとってかけがえのない事だった。それをすべて否定された。  僕という存在そのものを、否定された気がした。  学校に行けばみんなの笑い者。  家にいても、まるで僕は存在していないかのよう。  もう、いいんじゃないか?  僕ひとりいなくたって、世界は何も変わらない。
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