29人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
第一話:凶手と魔女の使い魔契約
――西暦40XX年、宇宙コロニー『ネオ・ルナ』。
そびえる摩天楼の天辺、凶手に刺された独裁者は血潮を垂らして後ずさる。
「アカツキ甲第五世代型強化人間『我樂號』……よくもやってくれたものだな」
その言葉に対するのは、同じく至る所から流血している凶手だ。
「やってやったさ。とっとと死ねィ」
言葉終わりに凶手は刃を振り上げる。
一閃の出来事だ。容赦も躊躇もない動作で、独裁者の首が、落ちる。
「天誅……」
返り血を浴びる凶手は、肩を弾ませ、そして血を吐いた。
独裁者より撃ち込まれた弾丸は、凶手の体を崩壊させ始めていたのだ。
ここまでか、と凶手は夜空を仰ぐ。
人工の天蓋空(スクリーン)に、作り物の星が瞬いている。
嗚呼。
あの星のどこかに、地球が――人類の故郷があるのだろうか。
意識が遠退いていく。
目の前が霞んでいく。
凶手として生き。
命じられるまま殺して。
最後の最後に飼い主に抗って。
今度は自分の命が、潰える時なのだろう――凶手は、その思いを最後に意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!