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そこで僕は目が覚めた。ずいぶん変てこな夢だった。デスクの上のコーヒーはもうすっかり冷めていた。
目の前の画面には計算途中の予算表が開かれたままだった。起きたばかりの目に、パソコンの冷たい光が刺さる。ディスプレイの端に貼られた色とりどりの蛍光色の付箋が、冷房に吹かれて揺れていた。先ほどの夢はそういう現実のはっきりした景色の中へ、あっという間に溶けて消えてしまった。
隣では僕と同じように限界を迎えた先輩が、デスクへ突っ伏して居眠りしていた。作りかけのプレゼン資料が彼の枕がわりになっている。その乾ききった青色の唇から、時折「すいません」とか「有給返上でやらせてください」とかいう寝言が漏れている。
「先輩、先輩」僕が乱暴に揺さぶると、先輩ははっとして起き上がった。
「うわ、やばい」先輩は何かに急かされるように立ち上がった。「俺、寝てた?」
「はい、気持ちよさそうに寝てましたよ」
「今、何時?」
「えっと…」
僕はオフィスの端に置かれたデジタル時計を見やった。そこにはこう書かれてあった。
「午前?ay?:*o*me√r時24分」
僕は時計が壊れているのだと思い、今度はパソコンの画面を見やった。だが書かれてあることは同じだった。スマホを見ても、同じだった。
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