傘のこえ

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梅雨のシーズン。 時期で言うなら、『大規模な水やりをする時期』と言っていいだろう。 梅雨シーズンがあるからこそ、木々や植物を基本とした自然のものが育ち、私達のもとに幅広く水が届くのだ。 とはいうものの、濡れる事は私達にとっては不便な事であるのも事実… この時期は、傘の存在意義を1年でもっとも実感する時と言っていいだろう。 梅雨シーズンは、例え降っていない日でも、いつも以上に念のためとして傘を持っている人は多い。 梅雨のシーズンは、例え晴れていても、どこかできつねさんが結婚式をあげているのか、時に空が晴れた状態のまま雨に見舞われる時だってある。 そうである以上、予報では曇りであっても傘を持った方がいいと思うのはなおさらだ。 もちろん、それが面倒で出発時は傘を持たず、そうした中で雨に見舞われる時は普通にある事。 そういう時は決まって、途中で傘を購入して対処するものである。 店によっては、それを事前に狙っているように、雨が降った時だけ傘売り場が出現する場所だってある。 こういった事も、傘は『出発時から用意せず、その場で買う』という形で持っている人が多いのをひそかに表しているように思える。 そしてその背景では、『普通に傘を持っているのだが、持っていくと意外に嵩張るので既に持っているのは持って行かず新たに買っていく』といった形で購入している人もいるはずだ。 周囲を見てみれば、私のように傘を最初から持つという事はせず、明らかに今買ったばかりのビニール傘を持っている人が多い。 その規模は、それこそスマートフォンを持ったまま歩いているのといい勝負になるほどだ。 …傘を差しつつ、歩きながらスマートフォンしてる人もいる… こういうのは、器用よりも、横着と言うものなのだろうか… 街中は歩く人と傘で覆いつくされていた。 街中を埋め尽くす傘の色は、透明と白が目立っていた。 色のついた傘もあったが、それでも透明と白の傘が圧倒的にその割合を占めているのが一目でわかった。 その中で、私はふとある事を感じていた。
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