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目的地に到着した私は電車を降りた。
結局、私は目的地に着くまで傘を持っている事をずっとメインで意識していた。
改札を通り、私は降り立った。
それじゃあ、あらためて行こうか。
私は傘にそう言って傘を開き、街中を歩いていった。
その帰り…
一通りの目的を終えた私は、帰路に着くために外に出た。
すると…
…!
『…!』
私と傘は共に反応した。
外は台風とは言わないまでも、かなりの大雨と強風が吹き荒れる天気となっていた。
…やはり、あの雲行きは気のせいじゃなかったか…
幸い、さっきまでいた場所は駅に近く、濡れる事なく改札に行ける場所だったのでこの時は大事には至らなかった。
しかし、それはあくまでここでの話…
駅を降りた後は、それなりに長い道のりに感じる道を歩かなければならない…
少なくともわかるのは、この暴風雨はしばらく収まりそうにないという事だった。
駅を降りた私は、外に出た。
外はいまだに暴風雨が続いていた。
これは明らかに傘を壊してしまう規模だと一目でわかる…
すると、傘は私に言った。
『行こうよ。ここで立ち止まってても始まらないよ。私も出来る限り壊れないようにしてみせるから!』
私の傘は本格的な傘という事もあり、それなりに強度はある。
もちろん、過信はしてはいけないが、意識して差していればあっさり壊れる事
はないはずだ。
私は小さく頷いた。
私は、傘を差して暴風雨の中へ進んでいった。
あおられないように私は、傘を出来る限り風下の向きに向けながら歩いた。
しかし、傘は今にも壊れそうな状態で風にあおられていた。
風の音とは別に、きしむような音が微かに聞こえてくる。
それでも傘は、私を雨から守ろうとしてくれていた。
その時…
私は傘を閉じた。
『何してるの?そんな事したら濡れちゃうよ!早く差して!壊れてもいいから、出来る限り雨風から守ってあげるから!』
傘は私に言った。
傘を閉じた今、私はバケツの水をかぶったように濡れ始めていた。
その中で、私は傘に言った。
…そうはいかないよ。
『え…?』
そう反応した傘に私は言った。
これ以上無理に差していれば、本格的な傘でも壊れるのは見えている…
そうである以上…
君を犠牲にしてまで少しでも濡れるのを防ぎたいなんて私は思わない。
むしろ…
どっちにしろ濡れるなら、君を犠牲にして濡れる事にはなりたくないんだ。
傘を抱えながら私は吹き荒れる暴風雨の中をひたすら押しのけるように歩いていった。
雨と風は容赦なく打ち付け、私は抱えている傘よりもびしょ濡れになっていった。
『ああ…』
容赦なく濡れていく私の姿を、傘は悲しそうに見続けていた。
私は体を引きずるように、ひたすら自宅を目指して歩き続けた…
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