〈第2歩〉

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「なぁ、キタガワ。今度、ホノカちゃんここに呼んでくれる?」 ある週末、俺はキタガワにそう切り出した。 「へ、ホノカっすか?なんで? あっ!あーっ!にーさん?もしや?もしかすると? ホノカにーーー」 「例の、味見してもらいたいんだよ」 「ホノカだけに、ホの… アレッ?そっち? なあんだぁー。にーさんに春が来たのかと思ったのに。ちっ」 コノヤロ。さりげに舌打ちなんかしやがって。あと、いちいち言い回しが古過ぎ。 「ハイ、ハイっと…にーさん、これから行きますって」 「はやっ」 「ちょうど、食べに行こうと思ってたらしいす。 ニシシ。にーさん、オレにも食べさせてくれるっすよね?」 「どーすっかなぁ。オマエ、からかってばっかだし。うっさいし」 「あーん。にーさん、ヒドイ。こんなに頑張ってるのに」 キタガワがふざけて、俺の腕に女みたいに絡み付いたところで、引き戸がガラッと開いた。 ホノカが入口で固まってる。 「…おじゃましました」 無表情のまま後ずさりをして、引き戸を静かに閉じようとしたので、 「わー!わー!わー!ちがう、ちがうからー!」 必死でホノカを引き留めた。 「ったく!オマエのせいで、ホノカちゃん引いちゃったじゃんかよ。カンベンしてくれよ」 ブツブツ文句を言うと、キタガワはうひゃひゃと笑い、ホノカは顔を肩の方にくっつけて、くっくっとこらえ笑いをしていた。 「来てくれてありがと。 あの、この前の偶然出来たラーメンさ、店で出したいと思ってて… あれから練習重ねて…アレと同じに出来たか、確かめて貰いたいんだけど」 俺の話を聞いて、ホノカはこくりと頷いた。 ホノカと、ついでにキタガワの前にも、ごとりとどんぶりを置いた。 「いただきまーっす!」 「いただきます」 ホノカとキタガワが同時に言った。 ズルッ、ズルッ、ズルッ。 二人が奏でる軽快なリズムを聞きながら、俺はドキドキしていた。同じに出来ただろうか? 「うん…うん…あは、オイシイ…」 ホノカの、頬に赤みが差して、少年みたいにくしゃっと笑う顔を目の当たりにして、俺の決心はついた。 キタガワのうるさい賛辞は、一切耳に入らなかった。 「すごいです、て…ハジメ、さん」 「うん。くくっ、まだ、店長って言う?(笑)」 ホノカのぎこちなさが、俺には新鮮で、心地いい。 …
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