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『ーーー今の季節にピッタリの楽曲でしたね、□□で【XXX】でした。
さて、ここでスペシャルゲストです。おなじみ、イッサ先生』
曲が明けて、パーソナリティーのタツミくんが紹介したのは、彼の恋人の勇実。
『そして、【きたいわ屋】のアルバイトのキタガワくんです』
湯切りをしていた麺を、危うく落としそうになった。あのヤロー、ナニついでに出演してんだよ。
「すいませーん。冷やし中華、ふたつお願いします」
「あっはい。冷やし中華2。少々お待ち下さいねー」
お客の注文を受けながら、俺はラジオに耳を傾ける。
『タツミくん、お疲れさま。
ちょうどそこで、キタガワくんに会ったんだよ。入って貰ってもよかったんだよね?』
『もちろん。キタガワくん、初めまして。後藤樹深です。
店長のハジメさんには、すっかりお世話になってました。
イッサからも、話はよく聞いてます(笑)』
『うわぁ、まじっすか?あ、っていうか、今オンエア中っすか?
え、え、え、オレ、居ていいんっすかね!?』
『ヘーキヘーキ。少しお喋りしていきなよ。ねぇ、タツミくん?』
『うん。キタガワくんが、よければ。味噌ラーメンの説明、してくれませんか?』
『りょーかいっす!うひょーっ、光栄っす!』
やべぇ。タツミくんも勇実も自由過ぎ。キタガワが図に乗る。
『えーっと。【きたいわ屋】の看板メニューは醤油なんすけど。
今日お持ちした味噌もね、じわじわと支持が集まってんすよ。
はい、お待ちどおさま。味噌おふたつです』
『わぁい。あ、キタガワくん、ラップ掛けるの上手だね。懐かしいなぁ。私もよくやった(笑)』
『ははは。にーさんにね、勇実くらい上手くやれ!ってハッパかけられたっす。猛練習したっすよ』
『あ、俺達だけごはんで、キタガワくんに申し訳ないな…イッサ、三等分にするけどいい?』
『いえいえ!そんな、おかまいなく!そんなんされたら、にーさんにこっぴどく叱られるっす!
にーさんのまかないが出なくなるかも!?それはオレ、泣いちゃうっす!』
『そう?なんか、ごめんね』
『あははぁ。キタガワくんも、ハジメちゃんのまかない好きなんだね。私もねぇ、しょっちゅう食べさせて貰ってたなぁ』
昔に思いを馳せる、勇実の声。俺もふっと昔に引き戻されそうになったが、
「すみませーん、醤油ラーメン、お願いします」
「あっハイ、醤油ね。ありがとうございます」
ひっきりなしに注文が飛ぶから、そんなヒマねぇ。
ちきしょー、キタガワぁ、早く帰ってこい。
…
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