〈第1歩〉

4/4
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/67ページ
『そんじゃ、キタガワくん、ほんとごめんね。いただきます。ズルズルッ…』 タツミくんの、麺をすする音。耳障りにならないように、多分マイクから離れて食べてる。 あ、そういえばタツミくんは、味を変えた後の味噌を知らないんだった。 勇実から聞いてるだろうけど、彼も前の味噌の味を気に入っていたから、ちょっと反応が気になる。 『ね、ね、どう?前と、違うでしょ?』 勇実も気になるのか、タツミくんの反応を急かす。 『ズルズル…んっ…違うけど…俺、こっちも好き』 ほっ。思わず溜め息が出た。相変わらず、アイツの好きは破壊力ハンパない。 『よかったっすー!にーさん、ラジオの前でにやついてるっす!』 ばっ。思わず口を片手で覆った。アノヤロ、千里眼でも持ってる? 『あー美味かった。ごちそうさまでした。 近い内に直に食べに行くって伝えて?あ、放送流れてるんだった(笑) ハジメさん、俺、また食べに行きますから』 『私も私もー。ゴクゴク…ぷはー、ごちそうさまでした』 『おそまつさまっした!にーさん、今から帰ります!オレのまかない、宜しくっす!』 カチャカチャとキタガワがどんぶりを片づける音をBGMにして、タツミくんは放送を続けた。 『ほんとにオススメです、【きたいわ屋】。 場所は、商店街のメイン通りを駅の方へ歩いていって、○○カフェの所を左に曲がった細い道の先にあります。 よかったら食べに行ってみて下さいね。 それでは次のリクエスト曲はーーー』 その曲が流れている間に、キタガワは抜けたらしい。曲が明けたら、タツミくんと勇実しか喋ってなかった。 しばらくして店の引き戸が開いて、キタガワが満面の笑顔で帰ってきたので、 「オマエ、仕事サボって楽しそうにしてんじゃねぇよ」 と、キタガワの頭にゲンコツを食らわせといた。 …
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!