すべてはかれの

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すべてはかれの

 俺の通う高校は、国内でも有名な‪α‬が多く在籍する名門校で、例に漏れず俺も優秀なアルファの父と美人なオメガの母を持つアルファ‬だった。  小さい頃からできないことは無かったし、男女誰にでも自慢じゃないが死ぬほどモテた。彼女だって途切れたことないし、βだろうがΩだろうが、時には‪α‬だって男女関係なく抱いた。  …それ、なのに。  身体中が、あつくて、あつくてしかたない。 「…随分、苦しそうだけど」  そんな俺とは正反対に、俺を見つめるこいつの目はいつもと変わらず冷静で、それがさらに羞恥を煽る。 「……お前、オメガだったの」 「っ、ちが、俺は…‪アルファ‬で」  3年前の診断結果だって、アルファだった。なのに、なんで。こんなのまるで―― ***  約1年前。こいつとの出会いは高校付属の寮の部屋の中だった。  入学式後、ホームルームだけだったので早めに解散したその日。皆がそれぞれ寮の自室に戻り、ルームメイトと楽しく親睦を深める中、俺のルームメイトだけがいつまでも帰ってこなかった。  確か同い年で、名前は如月駿くん、だったっけ。クラスは違うからそもそも学校に来ていたのかもわからないけど、どんな人なんだろうと緊張しながら彼の帰りを待ち続けた。  そうして彼が部屋にやっと来たのは、深夜1時を過ぎた頃だった。  さすがに寝ようと思って歯磨きをしようとしたところで、開いたドアに気づいた俺は、駆け寄ってその存在を確かめようと、して。 「初めまして、俺……って、ちょ、どうしたの?!」  その男の端正な顔立ちに似合わず、痛々しいほど大きなあざと、切れた唇の端から流れる血に驚き、自己紹介すらまともにしないまま素っ頓狂な声を上げた。 「…誰、あんた」 「え?あ、俺ルームメイトの真城遥…ってそれより怪我!手当するから、」 「いい。余計なことすんな」  その男はそれだけ言うと、真っ直ぐに2箱程度のダンボールしか置かれていない彼の部屋へ入り、扉を閉めた。 「な、なんだよ、それ…」  言わずもがな最低な第一印象。その彼の強い否定に若干の苛立ちと虚しさを覚え、そっちがその気ならとその日は俺もふて寝した。 ――そんな、最低の出会いから約1年。 「なあ駿、お前さすがに喧嘩し過ぎじゃねえ?」  未だなんの縁なのかルームメイトの如月駿は、今日も今日とて深夜に傷だらけで帰ってきた。  入学式の日以来、しばらくはお互い無視を決め込んでいたが、本来友好的な性格の俺はルームメイトとこのままギスギスなんて耐えられなくて、痺れを切らして駿に歩み寄った。  最初はいくら話しても無視されたし、手当も拒否られてたけど、毎回毎回しつこくウザがられない程度に話しかけて、無理やり手当をし続けたら、やっと友人くらいにはなれたと思う。 「そんなむしゃくしゃしてんの?ストレス溜まってんならもっとほかのことで発散しろよな。可愛い女の子紹介しよっか?」 「…お前みたいに下半身だけで生きてるやつとは違って、色々あんだよ」 「えー、いいじゃん。セックスは正義だよ正義。」 「……ヤリチン」 「知ってる♡」  はい手当終わり、と最後に広い背中を叩けば、いてぇと小さく返されたので思わず破顔した。随分俺に心を許してくれてる証拠だ。 「…俺さ、お前のこと正直最初は嫌な奴って思ってたけど。今はさ、仲良くなれて良かったって思ってるよ」 「……あ、そ」 「もー照れちゃって!素直じゃないとこも、俺がリビングで寝てたら部屋に連れてってくれる優しいとこも大好きだよ♡」 「きもちわる」  言いながら、おやすみと自室に戻る駿の後ろ姿を見て、きっとこれからもこんな関係が続くんだと、信じて止まなかった。 ――そう、この時までは。
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