番犬

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 ――ある雨の日。俺はデスクワークでミナギは家で待機中。電話が鳴った。抑えられた声で「帰宅の待ち伏せ狙い。プロの殺し屋。玄関」と言われ、緊張が走る。  ミナギによれば、雇われたのであろうプロの殺し屋が家に侵入。俺が帰宅したところを襲おうと家の中をうろついているようだ。  身内かもしれない。トイレに行くフリをしてそのまま家に向かう。  いくらミナギが警察犬のように果敢に犯人に食らいつく戦闘の得意な犬でも。家の中では傘を思うように振るえない。  ミナギが肌身離さず持っているあの黒い傘。あれは改造武器。スイッチ1つで剣にも盾にも銃にもなる。作ったのは本人。  高い身体能力を持ち、武器を手に犯人に立ち向かう姿は、まるで勇者。  車を飛ばす。ミナギが「僕がやる」なんて言うから。通話を切って、電源も切って。切れる寸前に「必ず守るから」なんて。  死ぬ気だ。あの子は自分の死をいとわない。刺し違えてでも、犯人を殺そうとしている。  頼む、生きていてくれ!願いながら、警鐘を鳴らし続ける胸を押さえ家に飛び込む。
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