番犬

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 見えたのは、左肩を傘の剣で刺し貫かれている戦闘服の男。それから、男に組み敷かれて眼前にまで迫るナイフを素手で握り留めているミナギ。 「やめろッ!!」  ナイフから滴る血がミナギの白い頬を濡らす。力負けして眼球をナイフが貫く寸前、俺は殺し屋に体当たり。  右腕に焼けるような激痛が走るが、気にしない。すぐに体勢を立て直した殺し屋のこめかみに警棒を叩き込み回し蹴りを決めた。  ヨロヨロ立ち上がったミナギが傘の骨の留め具を外すと、殺し屋の首にプスリ。 「キツめの麻酔薬。ゾウでも数時間は起きない。ハハッ……藤代さん、強いじゃん。格好よかった、よ……っ」 「ミナギっ!お前、骨が折れてるじゃないか!足も深く抉れて……。待ってろ、すぐ病院に――」 「だめ。病院は、僕、だめだから。自然治癒で、なんとかなるよ。いつもそうだったしさ。大丈夫大丈夫。アハハッ。藤代さんこそ、血が……」  元特殊部隊だったのかもしれない、プロの殺し屋。倒せたのはミナギがすでに弱らせていたから。  黒い傘は骨が折れ、剣状態の刃は欠けてしまっている。それでもミナギは、生きている。  ミナギが殺される!無我夢中だった。火事場の馬鹿力っていうのか?自分でも信じられない力で、殺し屋を圧倒した。  戦い慣れているミナギがボロボロになって倒れるほど強かったはずなのに。グラリと傾いた体を抱き留めれば、力なく笑う。
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