雨は降り続く

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「――僕の家族は、あなたと出会った時に殺された」  夜。壊れてしまった黒い傘を胸に抱いてミナギはそう呟いた。「僕は容姿も性格も血液型も、家族の誰とも似ていなかったから出生届も出されず監禁されていた」と付け加えて。 「警察の犬になったのは、存在しない僕は犬に使いやすいからと父親が警察に売ったから。でも僕が調教され賢く強くなると、父親はさらに金を要求するようになった」 「最低な家族だ。飼い主の方がよかったか?」  深くうなずく。紡がれる真実に、俺は驚かない。静かに、彼が全てを吐き出すのを見守る。 「調教はすごく厳しくて、いっそ死んでしまおうかって何度も思った。でも、家に帰ったらとびきり優しくて、温かくて。その優しさは、藤代さんによく似ている」  会ってみたかったな。ミナギの飼い主に。いや、本当は、もう会っている。 「優しくて。僕の生い立ちと、父親に激しく怒って。爆発した。あの人はブラッディバースデーの犯人を殺して、自分にすり替えて………………僕の家族を襲ったんだ」 「知っている。連続にしてはお前の家族の時が、酷かった。足を踏み入れた時に感じた違和感とただひたすらの怒り、そして悲しみ。お前は、命の恩人同然の飼い主を、殺してしまったんだな」  大きく見開かれる、漆黒の瞳。そこに映る俺の顔が、全てを物語っていた。
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