雨は降り続く

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 あの日感じた違和感の正体を求めてずっと調べていた。真相に気付いたのは、つい最近。  悪いな。真面目な現役警察官、なめるなよ? 「卑怯だよ、それ。そんなの…………僕のこと、わかってて…………あっあんな、こと……っ」 「お前の全てを知っても想いは変わらない。警察の俺が言うのもなんだけどな、殺人の罰を受けさせる気もない。存在しないまま、俺と一緒に償って生きていこう」  俺の想いは伝えた。全ての真実も明らかになった。あとは、ミナギの返事だけ。  壁に背を預け、黒い傘を抱く腕に力がこもる。斜め下を泳ぐ漆黒の瞳はやがてまぶたで覆い隠されて、抱えた膝に顔をうずめる。  愛もなく忌み嫌っていた家族を目の前で失った。生きる理由と居場所を、温もりを与えてくれた人を自分の手で殺してしまった。  その事実を、心を蝕む呪いのように抱え隠してきたミナギ。  苦しかっただろう。心が壊れ、狂ってしまってもおかしくない。今も、苦しいはずだ。そこへ、今度は俺だ。失うのを恐れている。 「お前が“存在しない者”でもこの数年間、普通に暮らしてこれた。もしもまた危険な目に遭っても、俺はお前を守る。嫌だっても言って命がけで守る。じゃあ、俺のことは?」 「僕が守る。飼い主を守って死ねるのなら、本望――」 「お前は元警察の犬だって言っただろ?今は違う。犬じゃない、他人のミナギが、俺を守ってくれるのか?」 「っ!た、にん……僕は……」
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