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距離を詰め、両手を壁について見下ろす。ハッ!と顔を上げたミナギの唇は、強く噛みしめていたせいで血がにじんでいる。
ワナワナと震える唇。俺を映す漆黒はプールになって、俺の顔がゆがむ。
「言え。ミナギは、これからどうしたい?」
ゆっくり顔を近づければ、「はぁっ、はぁっ」と呼吸が荒くなるミナギ。最後の言葉が、喉に引っかかって上手く呼吸ができない。
俺は、ニコッと微笑んだ。
するとミナギはキョトン顔。と同時に、ツウと、白い頬をプールからあふれた水が伝い落ちた。
「狡いよ、それ。本当はわかってるくせに。僕は、藤代さんのそばに、隣にいたい。これからもずっと。だから……だから僕を……あ、あ、愛、して……っ!」
元気な犬のように飛び込んできた。これは予想外で、勢い余って押し倒されるなんて。
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