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ブラッディバースデーの終息から1年後。
「おかえり。やけに遅かったね、残業?」
黒い傘がしゃべった。
雨が降る中、深夜だと言われる時間。俺が住んでいるアパートの階段の前で、黒い傘を差した人が立ち上がる。
「あれ、もしかして僕のこと忘れた?ずっとそばにいたのに寂しいなぁ。ねぇ、今から晩御飯な感じ?僕、結構前からここにいたからお腹が空いたんだよね」
明るい声。傘の中からひょっこり覗いたのは、人懐っこそうに笑う美しい顔。コテンと首をかしげると肩からこぼれる漆黒の髪。
小さい子供のように傘をクルクル回しながら、唖然とする俺を映す漆黒の瞳。
「おっ……お、お前っ!あ…………チッ。あー、家に上げてやりたいけどな、お前の正体がわからないうちは警戒したい。意味、わかるな?」
1日たりとも忘れることができなかったさ。あの日の出来事も、俺の目を……心を奪ったこの少年の存在を。
「わかるわかる。僕ってものすっごく怪しいからね?でも怪しい者じゃありませーん。話すからさ、このかわいそうなワンコを拾ってよ?藤代柚樹、課長さん?クスクスッ」
こいつ、俺のストーカーか?警察の犬なんかじゃなくて、ヤバいやつなんじゃあ……
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