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噂を聞いたことがある。警察の犬の中には、優秀過ぎて犯罪の危険性が高い者がいる。躾けのために、黒い首輪をつけるんだと。
居場所、行動、心拍数や体温は飼い主に筒抜け。もしも犯罪を起こしそうになれば内側から即効性の麻酔針が出て眠らせる。
まさか、そんな危険な犬が本当にいるなんて。それもこの少年が。俺の目の前で、笑っている。
「飼い主は?あぁ、警察相手にも言えないのか。なら、やっぱりあの家にいたのはブラッディバースデーの犯人を捕まえるためか?」
首輪は飼い主にしか外せない。確かめて、俺が離れると少年は悲しそうに笑いながら唇の前で人差し指でバツを作った。
犬は受けた命令を誰にも口外してはならない。だが、言えないのなら肯定ということなんだろう。
「なぜ今になって俺のところに来た?誰かさんの飼い犬のおかげで昇格してしまった俺を、予想外だからって消すためか?」
「あぁ、偶然現場に居合わせて据え膳で犯人を追っかけただけで課長にまで昇格だもんね?殺したりしないから、心配しないで。僕を心配して?僕の飼い主さ、死んじゃったんだぁ」
警察の犬は飼い主の命令には逆らえない。それがたとえ殺人であっても、己の死であっても。
暗殺は見当違いだったか。だが、警察署内で最近死んだ人がいるなんて聞いたことがない。どういうことだ?
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