茜色の果てに「さよなら」を

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 始業のベルが鳴る。僕は急いで屋上に着地して教室へ向かう。ここのところ僕は暇を持て余していた。それで、人間たちの作った「高等学校」というのに潜入して暇つぶしをしている。  授業というのは大変に興味深く面白い。我ら「神」に遠く及ばぬ存在である人間の中にも、真実を追求し真理を掴みかけた者達がいたのだ。その人間たちは俗に偉人とも言われ、数々の研究成果をもって人間の社会を大きく進展させてきたらしい。 「へえ、人間も意外とやるもんだな」 僕は化学や歴史の教科書を食い入るように見ては、そこに現れる過去の人間たちへの賞賛がわりに呟くのだった。  僕は人間との交流も楽しんでいた。全く想像もつかない挙動をとる彼らは見ていて飽きない。今の世の中はいったいどういう情勢にあるのか私には詳しくはわからない。しかしなんとなく、なんとなくだが、どこか面白可笑しなムードが漂っているのを感じる。  「国」という構成単位を持つ彼らは常に互いを意識しあって成長を競い合う。それは歴史の教科書を見ても明らかなことだった。僕はこれに大いに感心したのだ。彼らは犬猫と違って互いに高め合って真理に近づいていくのだ。これは彼らの高い知能がなせる技だろう。  教科書によれば昔には「戦争」というものがあったらしい。そういえば雲の上まで物騒なものが飛翔してくることが多い時代もあった。その時はただ漠然と人間に怒りを抱いたが、今こうして人間の社会を学んでみると、彼らには彼らの事情があったみたいだ。僕は今更その当時のことを掘り返して怒るつもりもない。
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