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「だからさ、これからは逆に真面目にコツコツ勉強やってみることにした! 今決めた! けど他にもやんなくちゃいけないことは沢山あってさ」
彼は段々と目を輝かせ始める。見るものすべてが新しい子供のように、楽しそうにしている。
「君は、きっといつか見つけるだろうね」
僕は滔々と語る彼の言葉を遮らないように、ポツリと零した。彼は気付くそぶりもなく話し続けている。
「そうなると人生って短いんだよな。やりたいことはこんなにもあるのに」
彼はその言葉で締めくくった。
「君はさ。勉強なんて嫌いなのかと思っていたよ」
僕はおもむろにそういった。事実彼のことはそう認識していたし、むしろ今回のことは僕にとって予想外の連続だった。
「うーん。今まではやらなかっただけなんだよな。でもやってみたら楽しいってこともあったし。なんて言うんだろうな。まあやっぱり色んな事を知れるのは楽しいじゃんか」
彼はケロっとしてそう言った。
「どうしてそう思うんだい?」
「簡単な事だろ。色々知ってるってことはその分やれることも多いんだぜ。やれることが多いってことは、もっと色んな事を知れるって事だろ? そんな事を繰り返していったらさ、多分いつか届くと思うんだ」
彼は決して冗談なんかじゃなく、大真面目でそう言った。もうそこには虚像は見えなかった。
「届くってのは、『自由』にって事でいいんだよな?」
「うん、ま、そうなんだけどさ」
彼にしては珍しくお茶を濁すような返答だった。
「俺が本当に欲しいのって『自由』の先にあると思うんだ」
「君は随分難しい事を言うね」
僕はすっかり感心してしまった。
「なんだろう。うまく言えないんだよ。今はまだ、な。けどきっと、きっと俺が探してる生き方はそれなんだ」
彼は遥かな遠景に目をこらすような語りを、静かなため息とともに終えた。その顔はどこか達成感に満ちていて、それでなお野心に満ちていた。
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