12時間

1/1
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ

12時間

 ――運命だと思った。  僕の通う、時雨(ときさめ)高校には変わった七不思議がある。  その一つに、『午後3時に寝て、午前3時に起きる女子生徒がいる』というものがあった。  早寝早起き、3ping girl《スリーピング・ガール》、半日姫など様々な呼び名が付けられたその少女。  彼女を見つけたのは、高校三年生の夏だった。 「君だね」 「……どうして私だって分かったの」  五時限目終わりの小休憩。校門の側で訝しげに彼女は言った。  ここ半年間早退する生徒を調べていたとか、七不思議が唱えられ始めた時期や出処を探ったとか、色々と理由はあったけれど。  僕はあえてこう言った。 「仲間だからだ」  それを聞いた彼女は意味が分からなさそうな顔をして、「意味が分からない」と実際に言った。  君は一番よく知っていると思うけれど、と僕は答えた。 「うちの学校の七不思議の一つにこうある。『午後3時に寝て、午前3時に起きる女子生徒がいる』」 「そうね。聞いたことがあるわ」  白々しく頷く彼女を見ながら、僕は続ける。 「じゃあ他の七不思議を知ってるかい?」 「他?」 「そう。この時雨高校には、こういう七不思議もある」  ここで僕は少し勇気を出した。 「『帰りのホームルームが始まると、クラスから一人消えている』」  彼女がはっと息を飲む音が聞こえた。 「……まさか」 「そう。それが僕だ」  だから僕は、この出会いを運命だと思ったんだ。 「僕は5時に寝て、5時に起きる」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!