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12時間
――運命だと思った。
僕の通う、時雨高校には変わった七不思議がある。
その一つに、『午後3時に寝て、午前3時に起きる女子生徒がいる』というものがあった。
早寝早起き、3ping girl《スリーピング・ガール》、半日姫など様々な呼び名が付けられたその少女。
彼女を見つけたのは、高校三年生の夏だった。
「君だね」
「……どうして私だって分かったの」
五時限目終わりの小休憩。校門の側で訝しげに彼女は言った。
ここ半年間早退する生徒を調べていたとか、七不思議が唱えられ始めた時期や出処を探ったとか、色々と理由はあったけれど。
僕はあえてこう言った。
「仲間だからだ」
それを聞いた彼女は意味が分からなさそうな顔をして、「意味が分からない」と実際に言った。
君は一番よく知っていると思うけれど、と僕は答えた。
「うちの学校の七不思議の一つにこうある。『午後3時に寝て、午前3時に起きる女子生徒がいる』」
「そうね。聞いたことがあるわ」
白々しく頷く彼女を見ながら、僕は続ける。
「じゃあ他の七不思議を知ってるかい?」
「他?」
「そう。この時雨高校には、こういう七不思議もある」
ここで僕は少し勇気を出した。
「『帰りのホームルームが始まると、クラスから一人消えている』」
彼女がはっと息を飲む音が聞こえた。
「……まさか」
「そう。それが僕だ」
だから僕は、この出会いを運命だと思ったんだ。
「僕は5時に寝て、5時に起きる」
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