episode252 お父様の亡霊

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「薫――部屋へ戻れ」 征司は僕を抱きとめたまま 思いのほか冷静な声音で薫に命じた。 しがみついた征司の肩先から見えた薫は やはり父に似た顔をして。 「早く――薬でも飲んで早く寝ちまえ」 僕に視線をやったままニヤリと口角を上げて 静かに自分の部屋へと去ってゆく。 「それで――?」 「え?」 一糸まとわぬ姿で残された僕は 征司の腕に抱かれたまま 「あいつの味も覚えたって言うのか?」 「ち、違いますよっ……」 あらぬ疑いを抱かれてぶんぶんと首を横に振る。 「じゃあなんで裸なんだ?」 「それは……」 どちらか夜這いに来たかと思って――。 本当の事も口が裂けても言えない。
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