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「やめてっ……下ろして……お兄様……」
僕が腕の中で身をよじるほど
頑なな力で僕を抱きすくめ
「どけよ」
征司は九条さんに肩をぶつけるようにして強引に歩を進める。
「おい!」
これにはさすがに穏やかな彼氏も黙ってはいなかった。
征司の肩を後ろからグッと引く。
「和樹は下ろしてと言ったんだ」
自分の事より僕の意志が無視されたことに意見するあたり。
もっと征司の感情を逆撫でする――。
「そんなに俺のお下がりが欲しいのかよ」
征司は低い声で唸ると
僕の身体をそっと下ろした。
それでも
「横取りか――その言葉あんたにそっくりそのまま返してやる」
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